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2015年08月05日

視線を逸ら



 あっけらかんと彼女は聞いた。
「そうだよ」
「ふうん。私、教授ってもっとおじさんの人かと思ってた」
「とても優秀な人なんだよ」
 彼女は不躾な視線で松下を、上から下までジロジロと眺めた。いつも
如新はす松下も対抗心から彼女を見返した。
「私、数学とか物理とか大嫌いなんだけど、どうしてそんなのがパパッとわかっちゃうのか不思議なのよね。そういうの、頭がどっか違うの?」
 問いかけは自分に向けられていた。
「興味の問題だと思いますよ」
 感情を交えない声で答える。彼女が首を傾げた。
「僕は数学が好きだから、数学の勉強をしています。絵が好きだから絵を描く、歌が好きだから歌を歌う…それらと同じですよ」
 彼女は『ふうん』と呟いた。遠くで彼女の名前を呼ぶ声がする。
「じゃあね、先生」
 赤いサンダルが砂を蹴って走っていく。松下はホッと息をついた。だけど苛立ちは消えてなくならない。
「彼女はついこの間まで俺が家庭教師をして熊證いた子なんですよ」
 そうではないかと察しはついていた。
「女の子とは知りませんでした」
「遠慮はないけど、素直で可愛い子でしょう」
松下は腕を組んだ。
「僕は彼女の黒い爪と、遠慮のない喋り方が好ましいものだとは思いませんが…」
 とたん、彼の表情が曇った。
「まだ若い子だから…」
「ファッションはともかく…若いといっても高校生でしょう。目上の人間に対する言葉遣いを覚えてもいい年頃ではないでしょうか」
 彼との間に流れる空気が気まずいものになる。昼間の自分の詩琳行為を棚に上げて、こんなところで行儀の悪さを建前に嫉妬を露にしたことを松下は後悔した。後悔しても、取り繕う言葉も浮かばない。仕方なく松下は砂浜の途中に腰掛けて、ぼんやりと海を眺めた。
 恋人は沈黙から逃げるように波打ち際まで歩いていったが、すぐに戻ってきて松下の隣に腰掛けた。水の中に入ったようには思えなかったのに、彼の濡れた指先からポタポタと雫が落ちた。
「複雑な形ですね」  


Posted by 愛與痛的邊際 at 11:19Comments(0)潔面產品