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2015年10月30日

もし事件前から


 八重子はがっくりと項垂れた。彼女自身も忍耐の限界だったのかもしれない。
「わかりました。では犯人は誰ですか」
 そう訊いてきた加賀の口調があ鑽石能量水 消委會まりにも穏やかなものだったので、昭夫は刑事の顔を見返した。加賀は何ともいえぬ哀れみに満ちた目を向けていた。
 やはりこの刑事は何もかも知っていたのだ、と思った。だから昭夫の告白にも驚いてはいないのだ。
「息子さん、ですね」
 加賀の問いかけに昭夫は黙って頷いた。同時に八重子が、わっと泣きだした。突《つ》っ伏《ぷ》し、背中を震わせた。
「松宮刑事、二階に行ってくれ」
「待ってください」八重子が顔を伏せ鑽石能量水 騙局たままでいった。「息子はあたしが……あたしが、連れて……」涙で言葉が途切れた。
「わかりました。ではお任せします」
 八重子は頼りない足取りで部屋を出ていった。
 加賀が昭夫の前で片膝をついた。
「よく正直に話してくださいました。あなたは大きな過ちを犯すところでしたね」
「やはり刑事さんは、はじめから我々の嘘を見抜いておられたんですね」
「いえ、電話で呼ばれた時点では、何もわかりませんでした。あなた方の自供を聞いた時も、矛盾は見つからなかった」
「ではどうして?」
 すると加賀は政恵のほうを振り返った。
「あの赤い指です」
「あれが何か……」
「あれを見た時、この指はいつ塗られたのだろうと鑽石能量水 消委會考えたのです。塗られていたのだとしたら、当然死体の首に赤い指の跡が残っていなければならない。おかあさんが手袋をはめたのは、事件の翌日ですからね。私がたまたまその場に居合わせたので、それは間違いない。  


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2015年10月22日

とばが聞こえ

 牛丸青年は内心舌をまいておどろきながら、足跡を伝ってろうかを奥へ奥へとすすんでいったが、とつぜん、ギョッとしたように立ちすくんだ。
 牛丸青年から五メートルほど前方に、荷物が山のようにつんである。さっき悪者たちが、宝石丸からかつぎだした荷物である。そのなかに、大きなトランクが一つあったが、見ると鑽石水そのトランクのふたが、むくむくと下から、もちあがってくるではないか。
 牛丸青年はギョッとして、急いで物陰に身をかくすと息をころしてトランクを見つめていた。
 そんなこととは知るや知らずや、トランクのふたは三センチ、五センチ、七センチと、少しずつひらいていったが、やがて十センチほどひらいたかと思うと、そのままピタリと動かなくなってしまった。
 おそらくなかの人物が、あたりのようすをうかがっているのだろう。やがてその人物は安心したのか、トランクのふたを大きくひらくと、ヒラリとなかからとびだしたが、なんとそれは三太ではないか。
 ああ、船のなかで見つからなかったのもむりはない。三太は荷物のなかにかくれていて悪者どもにかつがれて、まんまとこの仮面城へしのびこんだのである。
 牛丸青年は三太を知っていた。いつか三太が悪者の手先につかわれて、成城にある大野老人のところへやってきたのをおぼえていたからだ。
 牛丸青年は物陰からとびだすと、やにわに三太におどりかかった。だれもいないと思ったこのろうかでいきなりひとにとびつかれたので、三太はギョッとしてふりかえったが、牛丸青年のすがたを見ると、
「ちがう、ちがう、ぼく、もう、悪者の手先じゃない。ぼくはAmway安利文彦さんや、香代子さんのためにはたらいているんです」
 三太はひっしとなって叫んだが、むろん相手は口がきけないのだからそんなこるはずがない。
 牛丸青年は三太の手をとり、うしろ手にしばりあげようとした。三太はいっしょうけんめいにもがきまわる。
 と、このときだった。
 とつぜん、つきあたりの鉄のとびらがひらいたかと思うと、顔をだしたのは白髪の老人。ほおはこけ、目はおちくぼみ、からだは枯れ木のようにやせているが、どことなく気高い|威《い》|厳《げん》がそなわっていた。
「そこにいるのはだれか?」
 老人はしずかな声でたずねた。牛丸青年にはむろん、その声が聞こえるはずがないが、三太のようすにハッとふりかえると、びっくりしたように立ちすくんだ。
 そして、しばらく穴のあくほど、老人の顔を見つめていたが、やがてなにやらみょうな叫びをあげ、ばらばらと老人のそばへかけよると、いきなり、ガバとその足もとにひれふした。ああ、この老人はだれなのだろう。
 さて、こちらは金田一耕助である。
 加藤宝作老人の住居から、まんまと、銀仮面に逃げられた耕助は、なにを思ったのかその翌朝、等々力警部や文彦、さては香代子をともなって、自動車をとばしてやってきたのは、多摩川べりにあDiamond水機る日東キネマの撮影所だった。
「|井本明《いもとあきら》さんという監督さんはいらっしゃいますか?」
 と、受付の守衛にきくと、  


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2015年10月16日

うな気がし

 金田一耕助。――と、いう珍しい名まえは、そうざらにあるものではない。だから諸君のなかにもその名を聞いて、ハハアと思いあたるかたもあることだろう。
 名探偵、金田一耕助! そうだ。そのとおりなのだ。みなりこそ貧弱だが、顔つきこそひんそうではあるが、金田一耕助といえば、日本でも一、二といわれる康泰旅行社名探偵。その腕のさえ、頭のよさ、いかなる怪事件、難事件でも、もののみごとに、ズバリと解決していく推理力のすばらしさ。
 その金田一耕助は、むかしから文彦のおとうさんとは、兄弟のように親しくしている仲だったが、きょう、はからずもテレビのたずねびとの時間に、文彦の名を聞いて、ふしぎに思ってたずねてきたのだった。
「文彦くん、どうしたんだね。それできみは、大野健蔵というひとのところへいってきたのかね」
「はい、いってきました。でも、先生、それがとてもみょうなんです」
「みょうというのは……?」
 そこで文彦は問われるままに、きょう一日のふしぎなできごとを、くわしく話して聞かせた。途中で出会った気味の悪い老婆のこと、大野老人のけがのこと、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍点]を調べられたこと、ダイヤのキングのこと、それからまた西洋のよろいのなかに、だれかがかくれているよてならなかったことなどを、もれなく話したが、ただ、ポケットのなかにある、黄金の小箱のことだけは、どうしても話すことができなかった。それというのが香代子とのかたい約束があるからなのだ。
 金田一耕助は話を聞いて、びっくりして目を丸くしてい牛奶敏感たが、それにもましておどろいたのはおかあさんである。おかあさんはまっ青になって、
「まあ、そ、それじゃ文彦、そのひとはおまえの左腕にある、あのあざ[#「あざ」に傍点]を調べたというの」
「そうです。おかあさん。そして、これがあるからには、まちがいないといいましたよ」
「まあ!」
 おかあさんの顔色は、いよいよ血の気を失った。金田一耕助はふしぎそうにその顔を見守りながら、
「おくさん、なにかお心当たりがありますか?」
「いえ、あの……そういうわけではありませんが、あまり変な話ですから……」
 おかあさんの声はふるえている。おかあさんはなにか知っているらしいのだ。なにか心当たりがあるらしいのだ。それにもかかわらずおかあさんは、文彦や金田一探偵が、なんどたずねても話そうとはしなかったのだった。
 金田一探偵はあきらめたように、もじゃもじゃ頭をかきまわしながら、
「なるほど、するとその老人は、文彦くんの左腕にある、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍点]を調べた。ところがそれから間もなく、だれかがダイヤのキングをスギの木に、くぎづけに康泰旅行社していったのをみると、ひどくびっくりしたというんだね」
「ええ、そうです、そうです。それこそ気絶しそうな顔色でしたよ」
「そして、客間のよろいのなかに、だれかがかくれていたと……」
 金田一耕助はまじろぎもしないで考えこんでいたが、
「とにかく、それは捨ててはおけません。おくさん、ぼくはこれからちょっといってきます」
「え? これからおいでになるんですって?」
「先生がいくなら、ぼくもいきます」  


Posted by 愛與痛的邊際 at 16:43Comments(0)

2015年10月12日

愛のないキャ

狭くなっていく視界に、抵抗しようとするが、その引力は圧倒的だ。
 指先すら動かせなかった。
 意識が闇に呑まれていく。

 『県立藤見野(ふじみの)高校』。
 全校生徒は約千五百人。ゆったりとし鑽石能量水 消委會た校風と盛んなクラブ活動で人気のある学校だ。
 グラウンドの東西南北を囲む校舎は数年前に改装を終え、鉄筋コンクリートの真新しい物
に変わっていた。
 東校舎の近く。グラウンドから見て校舎裏に当たる場所に、縦長の簡素な建物がある。
 改装から取り残されたそれは、歴史を感じさせる場所と言えるかも知れない。
 通称『クラブハウス』。大小五十を超えるクラブの部室が集められた棟。
 この時間になれば、ユニフォーム姿の野球部がバットやボールの準備をしている様子や、
サッカー部が雑談しながらスパイクの紐を結んでる姿が見える。
 もちろん、運動部だけではない。
 開いた窓からは、机に座ってペンを走らせる漫画部の生徒達や、台本を片手に稽古する
演劇部員達も確認できる。
 東校舎の渡り廊下をのんびり歩く男子生徒も放課後の部活に向かう一人だった。
 身長は低めで痩せ型。
 平凡に分けた少し長めの髪とやや下がった目尻は、彼の持つ雰囲気を柔らかい物にしている。
 制服である緑を基調にしたブレザーとパンツはともかく、自由に選択できるシャツに淡い色の
襟付きを選択する点は、よく言えば優等生的な良識を持っているのだろう。
 胸に揺れる神楽坂と書かれたネームプレートはブルー。つまり一年生である事を表す。
「ナルミ、久しぶりにゲーセンよってかねえか」
「ゴメン。部活なんだ」
「最近、付き合いわるーい。っていうかぁ、ナルミってクラブ入ってたっけ」
「先月くらいからね。ちょっと断れない事情があってさ」
「ナルミが、部活鑽石能量水 消委會で青春か。似合わねぇ」
「あはは、言えてるかも」
「ったくどういう意味だよ」
「ま、しょうがないか。じゃあな。青春少年!」
「部活頑張ってねぇ」
 偶然会ったクラスメイト達と他ッチボールをして分かれる。
  


Posted by 愛與痛的邊際 at 17:00Comments(0)

2015年10月09日

思うとまた引

「そりゃそうさ、お前のように、罪人では無いんだから。おれは道楽はしても、女を死なせたり、女から金を巻き上げたりなんかはしねえよ」
 死なせたのではない、巻き上げたのではない、と心の何処《どこ》かで幽かな、けれども必死の抗議の声が起っても、しかし、また、いや自分が悪いのだとすぐに思いかえしてしまうこの習癖。
 自分には、どうしても、正面切っての議論が出来ません。焼酎の陰鬱な酔いのために刻一刻、気持が険しくなって来るのを懸命に抑えて、ほとんど独りごとのようにして言いました。
「しかし、牢屋《ろうや》にいれられる事だけが罪じゃないんだ。罪のアントがわかれば、罪の実体もつかめるような気がするんだけど、……神、……救い、……愛、……光、……しかし、神にはサタンというアントがあるし、救いのアントは苦悩だろうし、愛には憎しみ、光には闇というアントがあり、善には悪、罪と祈り、罪と悔い、罪と告白、罪と、……嗚呼《ああ》、みんなシノニムだ、罪の対語は何だ」
「ツミの対語は、ミツさ。蜜《みつ》の如く甘しだ。腹がへったなあ。何か食うものを持って来いよ」
「君が持って来たらいいじゃないか!」
 ほとんど生れてはじめてと言っていいくらいの、烈しい怒りの声が出ました。
「ようし、それじゃ、したへ行って、ヨシちゃんと二人で罪を犯して来よう。議論より実地検分。罪のアントは、蜜豆、いや、そら豆か」
 ほとんど、ろれつの廻らぬくらいに酔っているのでした。
「勝手にしろ。どこかへ行っちまえ!」
「罪と空腹、空腹とそら豆、いや、これはシノニムか」
 出鱈目《でたらめ》を言いながら起き上ります。
 罪と罰。ドストイエフスキイ。ちらとそれが、頭脳の片隅をかすめて通り、はっと思いました。もしも、あのドスト氏が、罪と罰をシノニムと考えず、アントニムとして置き並べたものとしたら? 罪と罰、絶対に相通ぜざるもの、氷炭|相容《あいい》れざるもの。罪と罰をアントとして考えたドストの青みどろ、腐った池、乱麻の奥底の、……ああ、わかりかけた、いや、まだ、……などと頭脳に走馬燈がくるくる廻っていた時に、
「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」
 堀木の声も顔色も変っています。堀木は、たったいまふらふら起きてしたへ行った、かと返して来たのです。
「なんだ」
 異様に殺気立ち、ふたり、屋上から二階へ降り、二階から、さらに階下の自分の部屋へ降りる階段の中途で堀木は立ち止り、
「見ろ!」
 と小声で言って指差します。
 自分の部屋の上の小窓があいていて、そこから部屋の中が見えます。電気がついたままで、二匹の動物がいました。
 自分は、ぐらぐら目まいしながら、これもまた人間の姿だ、これもま品牌維護管理た人間の姿だ、おどろく事は無い、など劇《はげ》しい呼吸と共に胸の中で呟《つぶや》き、ヨシ子を助ける事も忘れ、階段に立ちつくしていました。  


Posted by 愛與痛的邊際 at 13:17Comments(0)

2015年10月06日

困りきっている

「けっこうですな、殿さま。弥次喜多道中以上に楽しくやりましょう」
「楽しむのはいいが、かたきらしい人物に注意してくれ。それから、旅行中は殿さまと言うのをやめろ。関所の役人に変に思われたら、やっかいだぞ」
「ごもっともで……」
 のんきな旅だった。若党や中間が荷物を持ってくれる。用心棒がSmarTone 上網いるので身は安全。たいこもちのおしゃべりがつき、金は充分にあるのだ。連れてきた女はよく働き、遊ぶ相手の美女はどの宿場にもいる。
 かたきの人相書をくばりながら進んだ。
「この人物を見かけたら、大坂へ知らせてくれ。飛脚代は当方で出す。あとで必ずお礼をするから」
 途中、すりに金を取られ、老人の旅人を見かけた。修吾は金をめぐんでやり、老人は伏しおがむ。
「なんと情けぶかいかた。もしかしたら、水戸の黄門さまでは……」
「そんなにえらくはない。だいいち、時代がちがうよ」
「すると、黄門さまのご子孫で……」
「おじいさん、黄門さまの信者かい。それとも、本の読みすぎかな……」
 あれこれ話題にはことかかなかった。
 ある宿場に着くと、国もとの藩からの使いが待っていた。修吾は聞く。
「なにか起ったのか」
「大坂の両替店から、藩に対する貸金の、さいそくの話があった。その金を返済すると、お蔵の小判がほとんどなくなってしまう。どうしたものか、だれもいい知恵が浮かばず、貴殿のご意見を聞きたいと思い……」
「まかしておきなさい。そのうち大坂へ行くから、その時に相手に話して、期限をのばしてもらうことにする」
「よろしくお願いします。かたき討ちという重要なお役目の途中、お手数をかけて申しわけありません。あ、それから城代家老が、がんばるようにと申しておりました」
「まもなく目的をとげて帰国するとお伝え下さい」
 修吾は伊勢まいりをし、京をまわって大坂へ入る。藩からたのまれた仕事は簡単だった。利息を払い、そのうち景気がよくなるという話をしておけばすむことだ。元金について安心でき、利息さえとれれば、貸し主は承知するものなのだ。
 それを片づけ、修吾たちは大坂で遊ぶ。また、藩内の商人からもらった書面を持ち、かたきさがしの手伝いをしてくれるという同業者を訪れてみた。歓迎してくれた。
「よくいらっしゃいました。万事はうけたまわっております。いつおいでかと、お待ち申しておりました」
「で、かたきについての手がかりはわかったか。そろそろ、討ちはたさねばならない」
「少々お待ちを……」
 さすがに全国的なつながりを持つ同業者の組織。いろいろなNeo skin lab 好唔好情報が集っていた。かたきの駒山久三郎は、まず長崎へ逃げたとわかった。それから大坂へ戻ってきたが、いつのまにか姿を消してしまったと。それを聞いて、修吾はがっかり。
「すると、消息不明か……」  


Posted by 愛與痛的邊際 at 13:42Comments(0)