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2015年09月29日

美しいサンゴ

 それをもとに、なんとか金をふやそうと、ばくちに手を出した。たちのよくない旗本が、内職として屋敷内で|賭《と》|場《ば》を開いている。ここなら、町奉行所の力も及ばない。
 そこへ出かけたのだ。しかし、ものごと、そううまくもうかるわけがない。たちまち負け、借金を作った。おどかされる。
「金はいつ払ってくれる。返答によっては、ただではすまぬぞ」
「国もとに帰って、金を取ってくる。わが家には、祖先から伝升華在線わる名刀が、何本もあるのだ。武士に二言はない。つぎにわたしを見かけ、返済できなかったら、首をはねられても不服はない。それまで待ってくれ」
 その場のがれの弁解。一方、追いはぎの|詮《せん》|議《ぎ》もきびしくなる。人相がきが各所にはり出された。あまり似ていないが、被害者に会ったら、ごまかしきれそうにない。いよいよ江戸にいられなくなった。

「そろそろ国もとへ帰り、さまざまな計画を実行に移したいと思います」
 六左衛門は江戸家老に申し出て、出発した。もっともっといたい江戸だが、あれやこれやで、これ以上はむりなのだ。遊女たちと別れて、悪妻のいる藩に戻りたくないが、家臣は藩か江戸屋敷以外には住めない。
 帰国した六左衛門は、ふたたび勘定方としてお城づとめ、物産部門染髮の担当者となった。上役の勘定奉行が言う。
「江戸屋敷からの連絡によると、ずいぶんいろいろな研究をしてきたようだな。サンゴの栽培法とはすばらしい」
「お家のためでございます」
「どういうふうにやるものなのか、責任者として見ておきたい」
「はい……」
 いたしかたない。上役とともに小舟で海へ出て、六左衛門はぱらぱらとまいた。ただの砂なのだが、もっともらしく錦の袋に入れてあり、外国の字の説明書がついている。勘定奉行は感心する。
「それがサンゴのもとか。育ってものになるまで、何年ぐらいかかる」
「五年ぐらいでしょうか。それからは毎年、がとれるわけでございます。そのための肥料や管理に、費用がかかります。また、この秘法を他藩に盗まれたら一大事。その警備費用もいります。その点よろしく」
「サンゴがとれるのなら、それぐらいの支出はやむをえまい」
 ここでは昔と同じく、六左衛門は信用あるまじめな人物と思われているのだ。金を引き出せた。彼には江戸でのくせが残っている。また、ゆきがかり上、出まかせをつづけざるをえなかった。
 そのうち、城下の商人がやってきて、そっとささやく。
「なにやら、すばらしい計画を進萬聖節化妝派對めておいでだそうで……」
「どこから聞いた」
「じつは、勘定奉行さまからで」  


Posted by 愛與痛的邊際 at 10:47Comments(0)